第1回「多文化キッズ」連絡会報告

2月15日新宿のNSビルで令和6年度多文化キッズコーディネーターの連絡会が開かれました。

2024(令和6年度)第1回「多文化キッズコーディネーター」の連絡会
実施団体は、東京都「生活文化局スポーツ局」と「公益財団法人東京都つながり創成財団」が中心となりこの事業を進めています。
これは各市町村が配置する「多文化キッズコーディネーター」などを支援するために、各分野の専門家を構築するとともに、養成講座や、スキルアップ講座の開催を実施するためです。

多文化キッズコーディネーターとは?

すでに300万人を超えた、在留外国人の増加に伴い、多文化キッズも増加を続けていますが、その受け入れ態勢はまだ未整備です。日本語を母語としない子供たちにとって、日本語教育だけでなく、コーディネーターは必須です。そこで、東京都は、子どもたちとその保護者に対して必要な情報や支援が行き届くように支援を行っているのです。

コーディネーターの具体的な仕事は
①学校や進路の悩み、生活に寄り添い、適切な部門へつなぐ
②親子と学校、行政機関、NPOなどの間に入り調整を行う。
③子どもと日常的に接触できる場所を巡回し、子どもとその保護者の状況、困りごとを把握、地域④のリソースと連携して適切な支援や情報につなげる。
などの活動を行います。

2023年、令和5年度は中野区と目黒区が最初の認定を受けて今年度2年目はさらに2地区だけということです。今年度2024(令和6年)募集は4月下旬ということで、決定は6月になります。
ただ、年間たった2地区に助成金を出すということで、24区のほかに都下もある東京を考えると、とても足りないというのが現実です。

目黒区と中野区からの初年度実践報告

東京都は生活文化局スポーツ局と公益財団法人東京都つながり創成財団の事業概要の説明とあいさつの後にすでに実施している目黒区と、中野区から報告を受けました。

今回の連絡会では昨年認定された目黒区多文化キッズコーディネーターの北爪淑乃さんと公益財団法人目黒区国際交流協会による実践報告と中野区国際交流協会(ANIC)の鈴木加奈さんからの実践報告を受けました。

目黒区からの報告では多文化キッズサロン設置によるMIFA放課後日本語クラブの実践でした

間違えた言葉を発することが怖い、母国で受けてきた教育との進度差で、現在学校でやっている事業についていけず自信喪失、やりたくないという気持ちが勝ってしまう。また、日本語ができないため、在籍している学年より低い学齢の学習をすることに抵抗がある。同年代とのコミュニケーションがとりたくても上手に話せないため内向的になり友達ができない。結局、突然のカルチャーショックによって健康面に影響が出てしまうことも起こっています。
現在の課題として、支援ボランティア対象の研修の必要性、特別支援学級に対する対応の体制づくり、精神的サポートにおいて、学校と支援ボランティア間で情報共有が必要、教科学習にあたってはどこまで対応するのかなどが出されました。

中野区では、区内在住外国人は21198人でコロナ前を超え過去最高になっている。本人・保護者とのつながり、支援者とのつながり、学校とのつながり、行政とのつながりの中で、「ヤングケアラー」である子供たちの存在が大きな問題、親が子どもの日本語レベルを頼り始めたときに、こどもの学習意欲はとまる。それではそのこの日本語レベルはcan-doレベルのc1,c2に達しない。子どもと親、双方への働きかけが必要だ。子供を取り巻くつながりを確立して、多方面から取り組んでいく必要がある。

発表を受けて平場からの質問では、教育員会とのかかわりがわからない、どのような関係で教育員会と話していけばよいのか教えてほしい。というように、学校の中で、多文化キッズを支える連携が見えないということが顕在化しているようだ。

多文化キッズを取り巻く現状と課題

まとめの研修では、埼玉県「地球っこクラブ2000」の高栁なな枝、元、中国で青年海外協力隊活動をしてきたOGにより、日本語を母国語としない子どもたちの気持ちを体験してみようというワークショップを行いました。写真にもあるヒンディー語や中国語の文字が表示され、それは何と書いているのかを日本人として考えるワークショップを行った。ヒンディー語のあいうえお表を渡されたが、自分がその言語を知らない立場に置かれてみると、全く違った文字に頭が混乱した。この体験、気づきは必要だと思いました。

多文化キッズはまさにこの状態に、毎日おかれているわけで、この体験こそが、相手の気持ちを理解するきっかけになるということが分かった。

つまり、ルビを振っても意味は分からない。ゆっくりいうだけではわからない。「わかりましたか?」はほぼ無意味。説明すればするほど、わからなくなる。のである。

必要なのは、一回であきらめない。笑顔で、使えるものは何でも使う(ジェスチャー、実物、地図など)、わかるインプットを増やしていく。日本語の力が、その子の力でない。日本語能力だけで評価してはならないということが理解できた。

今回の連絡会議はコーディネーターの役割や実践が理解できた他、東京での活動を進めている団体との横のつながりができたことで、有意義な集まりであった。

NPO全国国際教育協会は学校と市民をつなげる活動の中で、学校の内部をよく知っているグループとして、コーディネータとして、この事業を支えていきます。

次回は2024年3月5日(9時45分から16時20分) 於 新宿NSビル3階D会議室 多文化キッズ コーディネーター研修 初級講座があります。申し込み

https://forms.office.com/r/x0mYJ3zyLg

(報告 斉藤宏)

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