コミュニケーションテクノロジーで人類の孤独を解消するオリィ研究所
株式会社オリィ研究所は、社会参加に課題を抱える人々のサポートツールを開発するテックカンパニーです。オリィ研究所が展開するのは、コミュニケーション分身ロボット『OriHime(オリヒメ)』、重度肢体不自由患者のための意思伝達装置『OriHime eye(オリヒメアイ)』、遠隔での労働を伴う業務を可能にする分身ロボット『OriHime-D(オリヒメディー)』などです。
事情を抱え学校に通えない子供やひとり暮らしの高齢者、外出に困難を感じる移動制約者などは、社会参加に必要な「移動」「対話」「役割」の機会を失いがちです。社会への帰属感の喪失こそ孤独の原因だと考えたオリィ研究所は、テクノロジーによる新たな形のコミュニケーションツールを開発し多くの人々の社会参加を実現すると共に、社会問題化する孤独の解消を目指しています。
今回はオリィ研究所の 巽 利紗 さんと 児島 諒 さん、そしてOriHimeパイロットのふーちゃんにご講演いただきました。
分身ロボットOriHimeを通して話してくれたフーちゃん
今回、OriHimeを操縦するのは、三好史子さん(パイロットネーム:ふーちゃん )。生まれつきSMA(脊髄性筋萎縮症)2型という全身の筋力が低下していく難病で、2018年からOriHimeを使って、カフェでの接客や講演等様々な仕事に挑戦中だそうです。ふーちゃんは自分の声で、ここまでの生活や気持ちを率直に話してくれました。
このカフェは、オリィ研究所が運営する、2021年6月に東京・日本橋にオープンしたカフェです。https://dawn2021.orylab.com/
分身ロボットを通じて、お客さんから注文を取ったり、料理を発注して、料理が届くまでの間、お客さんと雑談をしたり、様々な仕事を体験できます。
ふーちゃんはOriHimeを通じて、カフェで働いたり、各地で講演をおこなったり、こういった仕事を通じて、障がいという概念がなくなったかのような一体感を感じたそうです。まるで、ドラえもんのどこでもドアのような感覚で、人とのつながりがとても広がったからです。
OriHimeには、感情を表す動作がいくつもあり、手を振ったり、おじぎしたり、目が光で表現したり、まるで目の前にふーちゃんがいるかのような感覚で、親近感を持って話がスムースに入ってきました。
オリヒメの活用の広がり
このようにOriHimeによる障がい者の就労機会は広がっています。また、OriHimeは就労のみならず、交通事故で大怪我をして通学できなくなった子供や、不登校、外出困難になった子供たちの学習参加、社会参加等にも広く活用されています。
例えば、受験期に骨折で通学困難になった生徒のため、教室にOriHimeを置いて、学習支援にも活用されました。また、病気で外出できない生徒の代わりとして、OriHimeを修学旅行に連れて行って、修学旅行中の友達の助けを得て、みんなと一緒に旅行を体験できました。海外との交流学習や、引きこもり当事者の支援にも活用されています。
コミュニケーションテクノロジーが自身の変容を生み出す
不登校や引きこもりの生徒に対しては、私たち教員はだれしも様々なかかわりを続けてきました。不登校や引きこもりの全くいないクラスなどまれです。そもそも、学校に来ないので、家庭訪問を繰り返したり、ご父兄に学校に来てもらい話を継続してきました。学校には教室にこなくても、相談できる場所を作ったり、専門の相談員をいれてチームで対応してきました。
オリィ研究所のコミュニケーションテクノロジーで解決を見出す手法に光明があると感じました。自宅に居ながらにして自分の世界が広がっていくことを実感できれば、孤独から解放され、自ら外のせかいに出ていくきっかけがつくれるのではないかと可能性を感じています。
(斉藤宏)